タイムレコーダーを導入すればサービス残業はなくなるのか?現場が抱えるリスクとは

2017年、教員の長時間労働の問題を受けて中央教育審議会は学校へのタイムカード導入を勧める緊急提言をまとめました。学校職員に向けた働き方改革の対策ということですが、ここで疑問なのがタイムカードの導入で本当にサービス残業は減るのか?ということです。


タイムカードによる管理に潜む不信感

ほとんどの学校で勤怠管理が自己申告制をとっていることをうけ、教員の長時間労働を是正するための対策として中央教育審議会はタイムレコーダーの導入を勧めています。確かに自己申告制では勤怠管理が不十分であるというのは納得できますが、タイムレコーダーを導入したからといって本当に長時間労働やサービス残業を減らすことはできるのでしょうか?


これは学校の勤怠管理に限らず、企業の場合でも同じことが言えます。


タイムレコーダーといっても、タイムカードを使ったアナログ式のものと、ICカードや指紋認証といったデジタル式のものがあるのですが、前者のタイムカード式のものを採用するのであれば少し注意が必要です


自己申告に比べれば出勤・退勤の時刻が記録されるので勤務状況をしっかり管理できるように感じてしまいますが、そこには雇用主と従業員、双方に不信感が芽生えてしまうことがあります。



【会社視点】

従業員を雇用し給与を支払う会社の視点にたつと、タイムカードに記録された労働時間は業務にかけた時間ではなく「会社にいた時間」であるため、本当に残業代の支払いに値するものなのか?という不信感が残ります。なぜかというと、業務が終了した時間と会社を出る時間にはタイムラグがあるためです。


帰る支度はできているのに、従業員同士で話をしていて会社を出る時間が遅くなったというケースでも、その実態はタイムカードだけでは判断できないので、打刻時間を信用するほかありません。



【従業員視点】

従業員視点にたつと、タイムカードの導入というのは自分の労働時間を確実に証明できるようになるので、残業に対する不安は消えそうなものですが、中にはタイムカードを打刻させてから残業をさせるというブラック企業も存在します


これは明らかに会社による不正な「残業隠し」で違法行為なのですが、仕事を自宅に持ち帰った場合はどうなるでしょうか?会社を出るタイミングで打刻するのですから、自宅で行った仕事については残業とみなされない可能性があります。実際、会社側から指示のない自宅での業務は、会社としては給与を支払う義務は発生しません。


これでは、従業員は働いた分の対価を得られないので、会社へのフラストレーションがつのります。


水面下の対応ではなく根本的な解決策を

学校へのタイムレコーダー導入による長時間労働対策にも言えますが、タイムレコーダーを導入しただけでは現場におけるサービス残業のリスクは減りません。下手をすればサービス残業を増長する結果にもなりかねないということを企業は認識する必要があります。


タイムレコーダー導入の目的は、残業が多い従業員を把握し、残業を減らすための対策につなげることです。


ただ、その対策が残業時間を減らすという点だけにとらわれてしまうと、「業務量は変わらないのに、会社からは残業をするなと言われる」という理不尽な状況を作り出してしまいます。これでは根本的な問題は解決できず、結局のところ従業員は表面上は残業をしていないように見せ、サービス残業をするようになってしまいます。


では、根本的に改善するにはどうしたらいいのでしょうか?


それは、業務量の配分や仕組みを見直し、個人にかかる負担を減らしたうえで、働いた分はしっかりと対価を支払う仕組みづくりが重要となります。つまり、残業の多い従業員を見つけ出し、残業を減らせと言うだけでは駄目なのです。


これができていなければ、労働安全衛生の観点だけでなく、従業員のモチベーションが下がり、生産性の低下離職者の増加を招くことにもなります。


本当の労働時間を申告できる仕組みづくりが肝心

長時間労働を根本的に解決するには時間がかかるものです。冒頭で述べた通り、企業側には従業員の申告が正当な残業なのかという不信感、従業員側には正確な残業の申告がしにくいというジレンマがどうしても発生してしまいます。


この双方の不満を確実に解消するというのは難しいですが、正確な勤務時間の申告ができる仕組みを作る工夫はできます。タイムレコーダーというと、安価なタイムカード式のものを導入しがちですが、タイムカード式は勤務を終えた時間ではなく会社を出た時間での打刻になるため、サービス残業に関する問題解決の対策にはあまり向いていません。


サービス残業を無くしたいというのであれば、次の3点が重要です。

  • 残業時間の集計や分析が容易にできる仕組み
  • 残業する正当な理由と時間を申告できる仕組み
  • 不当な打刻(改ざん・定時打刻の強制)がしにくい仕組み


単にタイムレコーダーで時間を記録するというだけでなく、そのデータを集計・分析できて初めて有効活用できていると言えるでしょう


ただ、これをタイムレコーダー単体で実現しようとすると難しいため、タイムレコーダー(デジタル式)と勤怠管理システムの併用がおすすめです。集計・分析のしやすさはもちろんのこと、勤怠管理システムを使えば、残業をする場合は本人による申請と上司による承認をもって初めて勤怠として登録できるような仕組みをつくることができます。


つまり、正当な理由がなければ所定労働時間を超えての勤務時間は残業として登録できないということです。また、システムで登録されるので不正に改ざんするのは容易ではありません。


企業にとっては、残業理由をしっかり確認できるので、「なんのための残業なのか?」という不透明さをなくすことができます。


従業員にとっては、残業の必要性を「申請」としてデータに残すことができるので、たとえ上司に残業を却下されたとしても、その記録はシステムに登録されています。いざというときに、「残業申請は却下されたが、実際は上司に残業をさせられた」という主張ができるという安心感があります。


また、自宅に仕事を持ち帰る場合も、申請を通せば上司の許可のもとの残業となるため、業務に応じた対価が得られ、「サービス残業ばかりだ…」という従業員のフラストレーションをなくすことができるでしょう。


長時間労働やサービス残業を減らすための対策としてタイムレコーダーの導入を考えているのであれば、勤怠管理システムの導入も視野に入れる必要があります